20200723の日記 安楽死と嘱託殺人罪

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※7/23日時点では警察が逮捕状を取った段階のため、当然ですが事実認定の段階ではなく、あくまで報道されている内容に基づいての話になります。

 

 まず嘱託殺人の罪について。

 構成要件としては被害者の積極的な依頼を受けてその対象を殺害したこと。法定刑は6月以上7年以下の懲役若しくは禁錮なので殺人罪と比較すると軽い刑罰が規定されています。

 本件において警察がこの罪状で逮捕状を取ったということは、被害者から依頼があったということについては明らかだということなんでしょうね。

あとは違法性の阻却事由があるかどうか。

 本件では被疑者が被害者と直接の面識がないとされる点。そして安楽死のような人の尊厳に関わる件については病院の倫理委員会で審議されるべきですが本件ではそれが報じられていないという点。

 以上の2点から倫理的に妥当ではないとして違法性が有るとされるのではないかと考えます。そのため、今回逮捕上の発行に至ったのは現行法制の下では妥当なんだろうなあと。

 

 

 さて、それを踏まえて法制度として安楽死を認めるべきかということについて。

 結論から述べますと、私は安楽死を認めるのは困難であると考えています。

 

 そもそも前提として、安楽死は大別すると積極的安楽死と消極的安楽死の2つに分けられます。

 ざっくり説明すると、積極的安楽死は医師が患者に薬物を投与して死に至らしめること。今回の事件がまさにそうですね。

 一方で、消極的安楽死はいわゆる延命治療を行わないこと。例えば最善を尽くせば仮に最終的に植物状態になろうとも生き永らえるところ、それを行わないことで結果的に早く死に至ること。

 さて、ご存じの方もいると思いますが、日本では後者の消極的安楽死については認められています。先に挙げた倫理委員会の審議を経たり、手続き的にいろいろありますが、患者が納得し、延命治療を行わないことに対しての意思表示が明白である場合、消極的安楽死の措置を取ることができます。

 そのため安楽死を認めるべきかどうかを議論する際は、現行法では認められていない積極的安楽死についての議論であることが前提となります。

 

  私が積極的安楽死を認めるのが困難であると考える最大の要因は、患者の積極的安楽死を選択するという意思の認定が難しいのではないかということです。

 

まずは倫理的な視点から。 

 現在積極的安楽死を認めている国はベネルクス三国やスイス、アメリカの一部州等、欧米を中心に数か国ありますが、それらの国では「自己決定権」を重んじ、それを根拠に安楽死も認めれらるべきとして導入されています。

 一方で安楽死を認めるべきか議論する際には、「家族や他人に迷惑をかけたくない」という理由が俎上に載ることがあります。その思いに理解できるところはあります。死に際まで迷惑をかけたくないというのは一つの自然な感情でしょう。しかし、迷惑をかけたくないということを理由をする場合、はたしてそれは「自己決定」なのか、という線引きが難しくなります。現実の問題として、制度として安楽死を導入した場合に前述の理由で安楽死を望む人が出てくることは容易に想像できるかと思います。

 

 そして運用面。

 安楽死を望むという「自己決定」がされたとして、それをどう担保するのかという問題。真に本人が望んだものなのか、その意思は変わることがないものなのか。不可逆かつ、大なり小なり周囲に利害発生し得る「死」という事象に対して、その行為が正当なプロセスを経て行われたのか、それを検証することの社会的コストをどうクリアしていくか。極めて厳格な制度設計と運用が必要になる中で、あまり現実的ではないと感じています。

 

 以上より、「死」に対して国家がお墨付きを与えるという極めて重大な行為が行われるためには、明白かつ不変の「自己決定」が明示されない限りは積極的安楽死は認めるべきではない、という立場から、制度としての安楽死の導入はすべきではないと考えます。 

                                        

 

 正直なところ安楽死を望む気持ちはわかるんですよね。何のために生きてるんだろうって。迷惑をかけたくないなあって。死んだ方がマシだって。でもそれを国が認めてしまうと、何かバランスがおかしくなった時に大変なことが起きるような気がします。年間何万人も自殺者が出てる中で何言ってんだとも思いますが、曖昧でグレーなままにしておくべき領域なのかなと。「死」は重たい。

 

 

 前々から思っていたことにタイムリーな事件が起こったので長文を書いちゃいました。明日からまたとりとめのないくだらないことを書くと思います。

 

 

・今日の一曲 Golden Time - 堀江由衣


堀江由衣「Golden Time」Music Video

アニメ「ゴールデンタイム」OP1。

「わたし」にとっての「きみ」がどう変わっていくか、

その過程で「きみ」のおかげで「わたし」がどう変わったか。

この曲も7年前の曲ですかあ……。

近年堀江さんのリリースが少なくて界隈の時間が止まっていることもあって、

実感が湧かないですね。